Bonjour!こんにちは!ブルーダルジャン・ジャポンの金子です。
今回はフランス音楽のお話です。趣味のひとつがオーディオであることは以前からプロフィールでも触れているのですが、音楽そのものについて文章にしたことは意外と少なく…。今回はフランス留学時代に出会った、あるアーティストの魅力について書いてみたいと思います。
フランス語圏のスター「ストロマエ」とは?
ストロマエ(Stromae)は、ベルギー出身のシンガーソングライター・音楽プロデューサーで、本名はポール・ヴァン・アヴェル(Paul Van Haver)。アフリカ系とヨーロッパ系のルーツを持ち、フランス語圏の音楽シーンを代表する存在として知られています。
彼の音楽は、ヒップホップやエレクトロ、ワールドミュージック、シャンソンなどの要素を絶妙に融合させた唯一無二のスタイル。中毒性のあるリズムとメロディに、社会問題や個人的な喪失体験をテーマにした深い歌詞を乗せることで、世界中のリスナーの心を掴んできました。
その存在を一躍世界に知らしめたのが、2013年にリリースされたセカンドアルバム『Racine Carrée(ラシン・カレ)』。フランスやベルギーをはじめとする6カ国でチャート1位を獲得し、200万枚以上のセールスを記録するなど、社会現象的なヒットとなりました。
私がストロマエを初めて知ったのは、2013年のフランス留学中、ボルドーの語学学校でのこと。アフリカ系のクラスメートが「この曲、マジで流行ってるんだ!」と教えてくれたのがきっかけでした。その後、街角のカフェやお店、バスの中など、至るところで彼の曲が流れているのを耳にするようになり、フランスの日常に自然と溶け込んでいる存在だと実感しました。
音楽を通して「文化」を体験する――ストロマエとの出会いは、私にとってまさにそんな異文化交流の始まりだったのです。
社会派ヒップホップの代表作「Papaoutai」
それが、こちらの1曲。
曲名の「Papaoutai」はフランス語で「パパはどこ?」という意味。ダンサブルなエレクトロヒップホップに乗せて、実は非常にヘビーなテーマが歌われています。
ストロマエはベルギー出身で、ルワンダ人の父を1994年のルワンダ虐殺で亡くしました。彼が9歳の頃の出来事だそうです。まさにこの曲は、父親の不在という彼の実体験をテーマにしています。私にとってこの曲は、フランス留学で初めて触れた「異文化との出会い」そのものでした。普段クラシックやジャズを好んで聴いていた私にとっては、衝撃的な体験でした。
ワークアウトやドライブに!「Alors on danse」
ストロマエの魅力は、重厚なテーマとハイセンスなポップセンスの絶妙なバランスにあります。2009年に発表されたデビューアルバム『Cheese』に収録された「Alors on danse(さあ、踊ろう)」は、世界的なヒットとなりました。
この曲はテンポもよく、ドライブやワークアウトにぴったり。ちなみに私は仕事前の「気合い入れ」にも活用しています(笑)
ファッションブランド「Mosaert」の立ち上げ
2013年のセカンドアルバム『Racine Carrée(ラシン・カレ)』でフランス国内外に旋風を巻き起こしたストロマエですが、その後しばらく音楽活動を休止します。理由は、2015年のアフリカツアー中に服用したマラリア予防薬「ラリアム」の副作用により、深刻な健康被害(幻覚、精神障害など)を受けたため。現在では多くの国で販売禁止になっているそうです。
活動休止後は、自身が設立したクリエイティブレーベル「Mosaert」を通じて、ファッションや映像制作などに力を入れるようになりました。
Mosaertのブランドは、音楽の世界観をそのままファッションに落とし込んだようなデザインで、個人的にも大好きなラインです。
建築アートとのコラボ:パリ新駅「サン=ドニ=プレイエル」
さらに最近では、フランスの巨大インフラプロジェクト「グラン・パリ・エクスプレス」にも関わっています。これはパリ五輪に向けて進行中の都市交通再整備計画で、全長200kmに及ぶ新路線と68の駅が開業予定。
その中でも注目なのが、サン=ドニ=プレイエル駅。ストロマエは、弟のリュック=ジュニアと共にこの駅の内装アートを手がけることになっています。建築設計はなんと日本の隈研吾さん!「木と人間の調和」というテーマのもと、アートと建築の国境を越えたコラボレーションが進んでいるそうです。
音楽活動の再開と「Multitude」
長い沈黙を破って、2022年に約9年ぶりとなるアルバム『Multitude(群衆)』を発表。ファンの間ではまさに「待望のカムバック」でした。
先行シングル「Santé(乾杯)」と「L'enfer(地獄)」では、社会や精神の問題に切り込みながらも、聴きやすく魅力的なサウンドが健在。
「Multitude」ツアーと無料配信
アルバムリリース後はフランス各地でのツアー「Multitude Tour」が開始されましたが、健康上の理由から2023年5月にツアーは途中で完全中止に。私も12月のライブに行く予定だったのですが、残念ながら叶いませんでした。しかしその代わりに、ツアー映像が2024年12月にYouTubeで無料公開されました。
ライブでのエネルギーと、視覚的にも美しい演出を味わうことができるので、未体験の方はぜひチェックしてみてください。
おわりに:音楽とアートの境界を越える表現者
ストロマエは単なるシンガーではなく、社会を見つめ、アートと融合しながら独自の世界観を築くクリエイターだと思います。彼の作品に触れることで、音楽の「楽しさ」だけでなく、「考えるきっかけ」や「異文化理解」にもつながる体験ができるのではないでしょうか。
また素敵な新曲やコラボレーションが届く日を心待ちにしています!
Stromae ストロマエの魅力|3枚のアルバムで聴くフレンチポップ
Bonjour!こんにちは!ブルーダルジャン・ジャポンの金子です。
今回はフランス音楽のお話です。趣味のひとつがオーディオであることは以前からプロフィールでも触れているのですが、音楽そのものについて文章にしたことは意外と少なく…。今回はフランス留学時代に出会った、あるアーティストの魅力について書いてみたいと思います。
フランス語圏のスター「ストロマエ」とは?
ストロマエ(Stromae)は、ベルギー出身のシンガーソングライター・音楽プロデューサーで、本名はポール・ヴァン・アヴェル(Paul Van Haver)。アフリカ系とヨーロッパ系のルーツを持ち、フランス語圏の音楽シーンを代表する存在として知られています。
彼の音楽は、ヒップホップやエレクトロ、ワールドミュージック、シャンソンなどの要素を絶妙に融合させた唯一無二のスタイル。中毒性のあるリズムとメロディに、社会問題や個人的な喪失体験をテーマにした深い歌詞を乗せることで、世界中のリスナーの心を掴んできました。
その存在を一躍世界に知らしめたのが、2013年にリリースされたセカンドアルバム『Racine Carrée(ラシン・カレ)』。フランスやベルギーをはじめとする6カ国でチャート1位を獲得し、200万枚以上のセールスを記録するなど、社会現象的なヒットとなりました。
私がストロマエを初めて知ったのは、2013年のフランス留学中、ボルドーの語学学校でのこと。アフリカ系のクラスメートが「この曲、マジで流行ってるんだ!」と教えてくれたのがきっかけでした。その後、街角のカフェやお店、バスの中など、至るところで彼の曲が流れているのを耳にするようになり、フランスの日常に自然と溶け込んでいる存在だと実感しました。
音楽を通して「文化」を体験する――ストロマエとの出会いは、私にとってまさにそんな異文化交流の始まりだったのです。
社会派ヒップホップの代表作「Papaoutai」
それが、こちらの1曲。
曲名の「Papaoutai」はフランス語で「パパはどこ?」という意味。ダンサブルなエレクトロヒップホップに乗せて、実は非常にヘビーなテーマが歌われています。
ストロマエはベルギー出身で、ルワンダ人の父を1994年のルワンダ虐殺で亡くしました。彼が9歳の頃の出来事だそうです。まさにこの曲は、父親の不在という彼の実体験をテーマにしています。私にとってこの曲は、フランス留学で初めて触れた「異文化との出会い」そのものでした。普段クラシックやジャズを好んで聴いていた私にとっては、衝撃的な体験でした。
ワークアウトやドライブに!「Alors on danse」
ストロマエの魅力は、重厚なテーマとハイセンスなポップセンスの絶妙なバランスにあります。2009年に発表されたデビューアルバム『Cheese』に収録された「Alors on danse(さあ、踊ろう)」は、世界的なヒットとなりました。
この曲はテンポもよく、ドライブやワークアウトにぴったり。ちなみに私は仕事前の「気合い入れ」にも活用しています(笑)
ファッションブランド「Mosaert」の立ち上げ
2013年のセカンドアルバム『Racine Carrée(ラシン・カレ)』でフランス国内外に旋風を巻き起こしたストロマエですが、その後しばらく音楽活動を休止します。理由は、2015年のアフリカツアー中に服用したマラリア予防薬「ラリアム」の副作用により、深刻な健康被害(幻覚、精神障害など)を受けたため。現在では多くの国で販売禁止になっているそうです。
活動休止後は、自身が設立したクリエイティブレーベル「Mosaert」を通じて、ファッションや映像制作などに力を入れるようになりました。
Mosaertのブランドは、音楽の世界観をそのままファッションに落とし込んだようなデザインで、個人的にも大好きなラインです。
建築アートとのコラボ:パリ新駅「サン=ドニ=プレイエル」
さらに最近では、フランスの巨大インフラプロジェクト「グラン・パリ・エクスプレス」にも関わっています。これはパリ五輪に向けて進行中の都市交通再整備計画で、全長200kmに及ぶ新路線と68の駅が開業予定。
その中でも注目なのが、サン=ドニ=プレイエル駅。ストロマエは、弟のリュック=ジュニアと共にこの駅の内装アートを手がけることになっています。建築設計はなんと日本の隈研吾さん!「木と人間の調和」というテーマのもと、アートと建築の国境を越えたコラボレーションが進んでいるそうです。
音楽活動の再開と「Multitude」
長い沈黙を破って、2022年に約9年ぶりとなるアルバム『Multitude(群衆)』を発表。ファンの間ではまさに「待望のカムバック」でした。
先行シングル「Santé(乾杯)」と「L'enfer(地獄)」では、社会や精神の問題に切り込みながらも、聴きやすく魅力的なサウンドが健在。
「Multitude」ツアーと無料配信
アルバムリリース後はフランス各地でのツアー「Multitude Tour」が開始されましたが、健康上の理由から2023年5月にツアーは途中で完全中止に。私も12月のライブに行く予定だったのですが、残念ながら叶いませんでした。しかしその代わりに、ツアー映像が2024年12月にYouTubeで無料公開されました。
ライブでのエネルギーと、視覚的にも美しい演出を味わうことができるので、未体験の方はぜひチェックしてみてください。
おわりに:音楽とアートの境界を越える表現者
ストロマエは単なるシンガーではなく、社会を見つめ、アートと融合しながら独自の世界観を築くクリエイターだと思います。彼の作品に触れることで、音楽の「楽しさ」だけでなく、「考えるきっかけ」や「異文化理解」にもつながる体験ができるのではないでしょうか。
また素敵な新曲やコラボレーションが届く日を心待ちにしています!