どこがどこ?南フランス・プロヴァンス・コートダジュールを地図と写真で解説

どこがどこ?南フランス・プロヴァンス・コートダジュールを地図と写真で解説

今回は、私たちのラベンダー農園が位置する「プロヴァンス地方」について、地理や歴史、文化の違いをGoogleマップと写真を使って解説します。「南仏」「プロヴァンス」「コートダジュール」…日本語では混同されがちなこれらの言葉。実は指している場所がそれぞれ異なるのをご存知ですか?この記事では、その違いを分かりやすくご紹介していきます。

南フランス(南仏)とは?北緯45度より南の広いエリア

「南フランス」は、北緯45度線より南に位置する広範囲な地域の呼び名です。大都市で言えば、ボルドー・トゥールーズ・マルセイユ・ニースなどが含まれます。歴史的には「オクシタニア」とも呼ばれ、かつてはローマ法が用いられていた南部文化圏。フランス国内でも文化や法律に違いがあった地域です。

プロヴァンス地方とは?山と海に囲まれたフランス屈指のリゾート地

プロヴァンス地方の正式名称は「プロヴァンス=アルプ=コートダジュール地域圏(Provence-Alpes-Côte d’Azur, 略称PACA)」で、マルセイユを州都とする南フランスの一大地域圏です。地中海とアルプス山脈という対照的な自然に囲まれており、「香りの都グラース」や「古代ローマ遺跡の町アルル」「教皇庁のあるアヴィニョン」など、歴史・自然・文化がぎゅっと詰まった観光地でもあります。

この地域は、フランスで唯一「海と山の両方に接している地域圏」とされ、東西・南北にまたがる多彩な気候と地形をもっています。地中海沿岸では温暖な気候と陽光に恵まれ、リゾート地としてコートダジュールが発展。一方、北部から東部にかけては、アルプス山脈がそびえ立ち、ウィンタースポーツや大自然のアクティビティが盛んなエリアです。

なかでも注目したいのが、フランス南東部のオート=プロヴァンス地方。その中に位置する「アルジャン村(Argens)」は、標高1,400mの山岳地帯にあり、まさに“空に近い村”。この村にあるのが、私たちBLEU D’ARGENS(ブルーダルジャン)のラベンダー農園です。

ブルーダルジャン農園では、真正ラベンダーの在来種を無農薬・自然栽培で育て、蒸留・製品化までを一貫して手がけています。高地特有の涼しい空気と日照、ミネラル豊富な石灰岩質の土壌が、精油の香りに透明感と奥行きを与えています。

周囲には「ヴェルドン自然公園」や「リュベロン山地」「メルカントゥール国立公園」など、フランスでも屈指の大自然が広がり、ユネスコの世界ジオパークにも認定されています。アルプス山脈の地殻変動が生んだ壮大な地形と、古くから守られてきた在来植物が共存する、まさに“自然の香りと命が息づく土地”。

観光地として有名なニースやアヴィニョンとは異なり、アルジャン村は人里離れた静かな山の村。けれども、ここには“地球が呼吸している”と感じられるような、深くて豊かな時間が流れています。そんな場所から、私たちは今日もラベンダーの香りを日本へ届けています。

アルプスに囲まれたプロヴァンスの自然

コートダジュールとは?碧い海が広がる南仏の宝石

「コートダジュール(Côte d’Azur)」は、イタリア国境のマントンから、ニース、カンヌ、アンティーブ、サントロペ、トゥーロンあたりまで続く地中海沿岸のエリアを指す呼び名です。

フランス語で「アズール=碧(あお)」の海岸線――その名のとおり、眩いばかりの碧い海と陽光が広がるこの場所は、南仏を代表するリゾート地として、世界中の旅人を魅了してきました。

この「コートダジュール」という言葉が誕生したのは19世紀末。1887年、弁護士であり作家のステファン・リエジャール(Stéphen Liégeard)が、自身の著書『La Côte d’Azur』の中でこの美しい海岸をそう名付けたのが始まりでした。彼の出身地はブルゴーニュの「コート・ドール(黄金の丘)」地方。碧い海を「アズール」、黄金の丘を「オール」と対比させて名付けられたこの詩的な地名は、瞬く間に人々の心を掴み、やがて定着していきます。

コートダジュールの海岸線

コートダジュールの中心都市であるニースは、イタリアにも近く、旧市街(ヴィエイユ・ヴィル)の石畳やマルシェ、19世紀のリヴィエラ建築が美しいことで知られています。冬でも温暖な気候に恵まれ、歴史的には英国貴族たちの避寒地として発展してきました。

街を見下ろす小高い丘「シャトーの丘」からの眺めは絶景で、湾を弧状に沿って続く「プロムナード・デ・ザングレ(イギリス人の遊歩道)」は、コートダジュールを象徴する風景のひとつです。

一方、カンヌは世界的に有名な映画祭の開催地として知られ、華やかなリゾートとラグジュアリーな雰囲気が漂う街です。高級ホテルが立ち並ぶクロワゼット通り、クルーザーが並ぶ港、ブランドショップが軒を連ねる旧市街――そのすべてが“優雅なバカンス”を感じさせます。

そして忘れてはならないのが、フランス人にとっての「バカンス文化」です。夏のバカンス(ヴァカンス・デテ)は、フランス人にとって人生の一部。家族や友人と海辺の別荘やキャンプ場に滞在し、1週間〜1ヶ月単位でのんびりと過ごすのが一般的です。

コートダジュールでは、そんなバカンスの風景が今でも当たり前のように息づいています。午前はマルシェで地元の野菜やチーズを買い、午後は海辺で日光浴、夕暮れ時にはテラスでワインとともにアペリティフを楽しむ…。そんな「何もしない贅沢」が、この土地の魅力です。

もちろん、世界中のセレブリティやアーティストたちにも愛されてきた歴史があり、ピカソやマティス、シャガールといった画家たちも、この地域の光と色彩に魅了されてアトリエを構えました。

「バカンス」と「芸術」、そして「碧い海」――この3つのキーワードがそろったコートダジュールは、まさに南仏の宝石と呼ぶにふさわしい場所です。

南仏のおすすめ都市① マルセイユ|歴史と多文化が交わる港町

紀元前から続く港町マルセイユは、プロヴァンス地方最大の都市。多くの移民が暮らす国際都市で、活気あるアラブ街や港の風情が魅力です。見逃せないのが「ノートルダム・ド・ラ・ガルド大聖堂」。海上安全を祈るマリア像が美しいこの大聖堂からは、マルセイユの街並みを一望できます。

ノートルダム・ド・ラ・ガルド大聖堂からの眺望 マルセイユ旧港の風景 マルセイユの街並み

南仏のおすすめ都市② カルカソンヌ|2500年の歴史が息づく城塞都市

「カルカソンヌを見ずして死ぬな」と言われるほど壮大な中世の城塞都市。二重の城壁と石造りの街並みは圧巻で、まるで映画の中に迷い込んだかのよう。ライトアップされた夜のカルカソンヌも幻想的で、歴史ロマンを感じる旅には外せないスポットです。

城塞都市カルカソンヌの全景 カルカソンヌの城壁内部 夕暮れ時のカルカソンヌ

「Le Midi」とは?フランス語での南仏表現

フランス語で「南フランス」を指す言葉には、「le sud(ル・シュド)」と「le midi(ル・ミディ)」があります。観光ブランドとして「Région Sud(レジオン・シュド)」という表現も普及しており、文脈によって使い分けられますが、文化的な南仏全体を指すなら「le midi」が一般的です。

3つの名称を整理してみよう

混同されがちな「南仏」「プロヴァンス」「コートダジュール」ですが、それぞれの違いは下記の通り。

  • 南フランス:北緯45度以南の広域。ボルドー・トゥールーズ・マルセイユなど含む
  • プロヴァンス:地中海とアルプスに挟まれたPACA地域圏。香り・芸術・自然の宝庫
  • コートダジュール:マントン〜カンヌ〜トゥーロンの地中海沿岸。文学的な美称

おわりに|地名の背景から旅がもっと面白くなる

一見似ている「南仏」「プロヴァンス」「コートダジュール」も、調べてみると成り立ちや文化、歴史が異なることが分かります。

バスク文化が残る南西部と、イタリアの影響を受けた南東部――どちらも個性的で魅力あふれる地域。次の旅では、そんな背景に思いを馳せながら、フランスの奥深さを味わってみてはいかがでしょうか。

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